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mc1397

2014年07月17日

研修報告

第16期自治政策講座報告書
1日 時 平成26年7月15日(火)13:00~17:10
2場 所 アクトシティ浜松研修交流センター
3主 催 自治体議会政策学会
4テーマ 生命を守る政治-安全・安心なまちづくりと自治体の責務
5講座内容
○第1講義「災害復興の3年を見る-政治・行政は何を後藤新平から学ぶのか」
  講師 青山 佾(明治大学大学院ガバナンス研究科教授・元東京都副知事)
 主な内容は次のとおり。
■後藤新平とは
・水沢藩 陸奥国胆沢郡塩釜村出身(水沢市を経て現在の奥州市)
・東北小藩下級武士の家系で、11歳の時が明治維新であった。
・占領軍の給仕として雇用、育成され、医師となったが、児玉源太郎に見込まれ、台湾総督府民政長官、満鉄総裁、東京市長、内務大臣兼帝都復興院総裁を歴任した。
*親権が絶対の現代に比べ、明治維新後は、官軍の占領下にあった地域から優秀な少年を育成するシステムがあった。子どもは社会が育てるという考え方が当時あった。

■関東大震災当時、東京市長であった後藤新平は何を考え、復興を実行したのか。
・大震災後、軍部は首都を内陸に移すことを主張したのに対し、後藤は東京のまちづくりのための次の考えで復興計画を立案し実行した。
 ①遷都せず
 ②東京を欧米に負けない近代都市にする
 ③金のことは心配するな
   ↓構想が雄大
  幅広の道路・・・44mの幹線道路(昭和通り)
  広軌鉄道・・・半世紀後の新幹線へと進展
  共同溝
  日比谷公会堂・・・市民が政治を議論する場
*関東大震災に比べ、東日本大震災は南北600kmに影響が及び、しかも工業地帯、漁業地域など異なった様々な地域での復興である。それぞれの地域で考える。現代は成熟社会であり、低成長、少子高齢化、価値の多様化、生活の質の向上を求めるなどが特徴とされる。

■仮設住宅と復興住宅
・阪神淡路大震災(平成7年)当時は、危機管理がなかった。その反省から生活支援法が制定され、住民の再建へとつながったが、その教訓が生かされているのか。
・仮設住宅は1戸当たり700万円の建設費。ここで住めるのは2年間、その後は復興住宅となるが、なぜ最初から復興住宅(市営住宅)を作らないのか。仮設住宅は避難者対策として、後で困ると分かっていながら建設した。仮設住宅は市町村負担はゼロだが、復興住宅は市町村負担がある。何とも説明しづらい住宅計画である。災害救助法(昭和22年制定)が改善されずにあることが問題である。
・三宅島の火山噴火当時は全島避難であったが、後に村営住宅(2000戸)を建て、神戸の教訓を生かした。住んでいるところに戻るのが基本、元通りの生活を取り戻すこと。
・孤独死が災害対策のメルクマール(指標)となる。復興住宅ではコミュニティはなし。ケースワーカーは書類に追われている。行政は、分類化はするが機能しない。人間の尊厳を尊重する。孤独死をなくすことが成熟社会の使命で、福祉の指標となる。
・アメリカの復興住宅はトレーラーハウス(700万円/台)
・避難所はやむを得ないものだが、体育館は支援物資が占領し、人は脇に追いやられる。
・避難所での炊き出しは、レトルトばかりでなく、手作りも組み合わせる。
・介護士、心理士などの専門職が不足している。

■義援金
・義援金は赤十字などの大手を通じると、時間がかかりすぎるし、場合によっては団体の人件費に使途されることもある。
・東日本大震災では、東京ボランティアグループはニューヨークの市民団体から大震災発災後の3月末、4月末に各5千万円の振り込みがあった。これを原資に、南三陸町にボランティアの拠点を作り活動をしている。当初に活躍したのはNGOであり、彼らは海外の経験から慣れている上、資金の集め方に熟知している。
・義援金などの寄附については、大手を充てにするのではなく、普段から、どこから支援を受けるのか、NGOとのつながりなどを考える。寄附金はアメリカの市民団体など国際的に集める工夫をする。

■後藤新平から学ぶ(後藤語録)
①長期計画
・1921年5月、東京市政要綱(8億円計画)(当時の東京の予算は1億数千万円)
 街路、下水、公園、学校、市場等の15項目のインフラ整備
・1923年の関東大震災後の復興計画の下敷きとなった。
②人材育成
・教育重視(学歴でなく学力重視)「学校を出たときは、改めて社会的新書生とならねばならぬ。西洋でドクトルの学位を得て後、いざこれからと言って勉強する。」「一に人、二に人、三に人」
③市民(地域自治)の力
・「都市計画は健全なる自治の精神を離れてはいけない」
・「生きとし生けるものの本能の中に、自治という力がある」
・「自治は市民の中にあって、決してよそにはない」
・「市民一人一人が市長である」
④富国強兵か殖産興業か
・「公の利益の為、必要な施設に要する費用は、出ずるを計って入るを制す」
・「交通機関は、営利より公共の利便を本旨とすべきである」
・「(欧米諸国に対して)科学と情報で生き残れ」
⑤国民本位
・「国と国との条約の如きは形式にすぎない。両国の親善は民と民との交わりにある」
*約90年前、後藤新平は自治と自立を説いていた。東日本大震災以後、草の根の交流が進んでいるが、被災者対策として土盛り防災(嵩上げ)の考えが主流となっている。堤防と防災の組み合わせは画一的な考えである。多額な費用を投じるのであれば、シェルターのような建物でいいのではないか。それぞれの地域のまちづくりはもっと多様であっていいのではないか。それぞれの地域が決めることである。

■質疑
問 自治体から職員を派遣しているが、1年間で交代している。効果はあるのか。
答 土木や都市計画では派遣は必要である。1年交代は問題であるが、受け入れ側の態勢の問題もある。定年退職者を採用してはどうか。長期間にわたり定着すると、そこで首長にかつがれ政争に巻き込まれるおそれがある。
問 寄附金の在りようはどうか。
答 日赤のような大手になると協力義務が伴い、そのためには普段から医師などを確保するため、人件費がかかり、それに寄附金が使われる。草の根活動を行う団体に寄附するという意識を持つこと。東日本大震災では、地域のFM局が役に立った。災害復興予算で運営しているが、これが無くなると潰れることになるので方策が必要である。
問 仮設住宅をより良いものとするためにはどうすればいいのか。
答 避難所、仮設住宅、生活用品の支給という3点セットが災害救助法の考えで、これで運営することに問題がある。成熟社会にふさわしい生活の質的充実が求められている。復興住宅についても、民間住宅の活用など多様の方策があっていい。現行法の改正が必要と考える。

○第2講義「6兆円の消費者被害や虚偽表示-消費者市民社会実現へ消費者教育と自治体の責務」
  講師 西村 隆男(横浜国立大学教育人間科学部教授、消費者教育推進会議委員(会長代理))
 主な内容は次のとおり。
■消費者被害の拡大と脆弱な消費者
①消費者被害
・高齢者被害の拡大(金融商品、不動産投資、健康食品)
・未成年者トラブルの購入金額も高額化
・インターネット関連被害の増加(架空請求、ゲーム課金)
・生活困窮者の消費者トラブルの増加(貧困ビジネス)
・障がい者の消費者トラブルの顕在化
②食品偽装
・外食メニューのインチキ表示
・産地偽装
・冷凍ものの〃鮮魚〃
  ↓
 景表法改正(2014)都道府県知事に対する措置命令権限の付与

■消費者行政の対応(2004年消費者基本法)
①消費者政策の理念
・消費者の権利の尊重(べースは消費者安全)
・消費者の自立の支援
②消費者政策の内容
・安全確保の強化
・消費者契約の適正化
・消費者教育の充実
・苦情処理及び紛争解決の促進

■地方消費者行政の現状
・市町村消費生活センター設置の増加(750か所)
・相談件数は漸増(90万件)
・市町村全体の4割は消費生活相談員を未配置
・市町村の6割は専門的資格を有しない相談員を配置

■消費者教育推進法の成立(2012年8月10日成立、12月13日施行)
①目的
・消費者が自主的かつ合理的に行動することができるよう自立の支援
・消費者教育の機会が提供されることは消費者の権利
・国及び地方公共団体の責務の明確化
②消費者教育とは
・消費者の自立を支援するため、消費生活の関する教育及び啓発活動をいう。
・幼児期から高齢期までの各段階に応じて体系的に行われるとともに、年齢、障害の有無その他の消費者の特性に配慮した適切な方法で行う。
・学校においては、教育職員の消費者教育に関する研修を義務付けているが、動きは鈍い。
・地域における消費者教育の推進については、高齢者、障害者等に対する消費者教育のため、民生委員、社会福祉主事、介護福祉士、その他の支援者に対し研修、情報提供等の措置を講じること。
③消費者市民社会のポイント
・公正で持続可能な社会の実現
・世代を超えた社会経済のあり様や地球環境への配慮
・積極的な社会参画
④地方公共団体の責務
・消費者教育に関する施策を策定し実施する責務を有する。
⑤消費者教育推進地域協議会
・都道府県及び市町村は、協議会を組織するよう努める。
・設置状況は15都府県、2政令市
・消費者教育推進計画の策定・・・9都府県、1政令市が策定している。
⑥消費者行政と教育行政の連携等(連絡協議会の設置)
・設置状況は、都道県では約半分、市町村では5%である。
・設置による成果では、約8割が「関係部局との情報や課題認識が共有できた」とする一方、「教材、広報物の作成」は2割にとどまっている。
⑦人材の育成等
・市民が判断し選択できるようになるためには、それを進める人材の育成が必要である。
・学校現場では教職員が、地域ではリタイアした元気のある人や経験者がその対象と考えられる。
・コーディネーターの育成(消費者行政、教育委員会、福祉などに精通した人材の育成)
・現在、国では行政職員、コーディネーター、地域のサポーターという三層構造のあり方を検討している。

■消費者庁の取り組み
①地方消費者行政活性化基金(26年度予算では30億円)の活用状況
・基金の活用として、パンフレット等の啓発資料の作成、学習教材等の作成及び購入、指導者養成などがあげられるが、その活用状況は、全国の教育委員会を対象とした文科省のアンケートでは「行ったことがある」のは6%、「行ったことはない」は78%、「基金を知らない」は14%という状況である。
②先駆的プログラムの運用
・国から提案する政策テーマを踏まえ、地方公共団体独自の企画により先駆的事業を実施する。
・政策テーマは、「食の安全・安心の確保」「風評被害の防止」「消費者のための安全・安心地域体制の整備」「消費者被害回復制度の運用に向けた活動の支援」「消費者教育の推進(地域での推進体制強化及び事業者等のコンプライアンス意識の確立等)」である。

■教育委員会における消費者教育の事例
・消費者教育スモールステージ(岐阜県教育委員会)・・・児童生徒、保護者、地域住民を対象に、講演会やワークショップの開催
・消費者教育推進のための調査研究事業(伊勢市)・・・フェアトレード学習、環境に配慮した消費生活の工夫と実践
 *フェアトレードとは、途上国で生産される農産物や雑貨を安く買いたたかず、公正な価格で取引する取組のこと。
・キッズライフアカデミー(大阪府教育委員会)・・・小学校高学年を対象に、賢い消費者になるきっかけづくりとしての講座の開設
・ゆめ!さくら博(さくら市教育委員会)・・・ブース出店による情報提供

■消費者教育の課題
「予算がない」「指導者や講師となる人材がいない」「どのような取組をすればいいのか分からない」
「他の優先課題があり取り組めない」が教育委員会から寄せられている。

■課題解決の方策
「効果的な実践事例の紹介」「パンフレット・教材等の作成、配布」「定期的な情報提供」「多様な主体が連携・協働するための仕組みの創設」などが教育委員会から求められている。

■質疑
問 警察との連携はどうであるのか。
答 消費者安全法が改正され、地域連絡協議会に警察の関与ができるようになった。目的は二次被害の防止のため、カモリストに載った騙されやすい人への対応である。従来、行政と警察の連携は交通安全であったが、詐欺被害の防止、情報交換、ネットワーク化が可能となった。
問 教育委員会は外部講師に対し消極的のように思えるが。
答 教育委員会の壁は厚い。文科省は、消費者教育は教師が務めるものと考えている。社会経済情勢の変化から専門家による教育が求められている。
問 地域包括支援センターとの関わりは。
答 消費者教育推進地域協議会に福祉の人も関わるべきで、センターの人がコーディネーターを担うべきである。

□所感
 自治体議会政策学会主催の自治政策講座は従来から参加し、政策立案の勉強をさせていただいており、今回は日程の都合で2日間の講座のうち初日のみの参加となった。
 第1講義は、後藤新平の研究家として一流の青山先生から後藤新平の知られざる実像が講義され、東京のまちづくりの先見性に驚かされたと同時に、関東大震災の当事者としてのリーダーシップには学ぶべき点が多々あると感じた。東日本大震災発災以後の政府の対応、特に原発事故への対応について、今に至るも見通しのなさ、統治力不足の点からも、90年前の政治家の偉大さが際立っている。しかし、後藤新平の時代と現代では状況が異なっており、一概の比較は意味あるものではないと思うが、後藤語録にあるように「自治は市民の中にあって、決してよそにはない」「市民一人一人が市長である」という言葉は慧眼であり、いつの世にも通じるものである。心に刻んでおきたい言葉と思う。東日本大震災における教訓(避難所、仮設住宅、復興住宅、孤独死等の問題)は検証し、地域の防災計画や防災活動に生かさなければ、同じ轍を踏むことになると講座を聞いて感じた。
 第2講義の消費者教育については、一昨年の12月に施行された消費者教育推進法を取り上げたものであり、これから具体的に政策化しなければならない課題である。西村先生は内閣府の消費者教育推進会議委員などを歴任しており、消費者教育の第一人者である。消費者教育推進法を中心にお話があり、現在の状況、問題、課題が明らかになった。この問題を消費者行政の担当だけのものとしてはならない。教育委員会がどう関与していくのか、福祉行政はどうするのかなど、縦割り行政を横断的な行政に変えていかないと、この問題の解決にはつながらない。高齢者、障害者という弱い立場の人を騙すことは許してはいけない。そのためには消費者自身が判断し選択できる賢い消費者にならなければならないと思う。あらゆる分野の行政は連携し、地域と協働し、卑劣な犯罪を見逃さない、許さないという消費者市民社会の確立が急務と思う。
  

Posted by mc1397 at 17:26Comments(0)TrackBack(0)